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Romance Writer’s Love Story

chapterT 香澄のstory 〜prologue〜



カタカタと小気味良く部屋に響くキーボードの音。
それが作り出すのは、想像の中だけに存在する夢の世界。
そこに住むヒーローたちは、冷徹な大企業のオーナーだったり、傲慢で大金持ちの牧場主だったり、ある時は世の中に背を向ける孤独なドクターだったりする。
ヒロインは飛び抜けた美人ではなくても誇り高く、人に媚びない真っ直ぐな性格の女性が好み。
リッチでゴージャス、その上ホット。そんな彼らを自由に動かして、理想の恋物語を描いているとこの上なく幸せな気分になれる。
そしてこの空想の世界の話をネットにのせて、現実の世界では会うこともない人々とも共有する。
書いている私のことを知らない読者さんに褒めてもらうと、くすぐったい気持ちになるし、何だか自信がわいてくる。
そんな時は、暫し冴えない現実の自分を忘れ、物語を紡ぐロマンチストな女性になりきれるのがうれしい。
彼女が小説を、それもとびきり熱いロマンスを書いていることは誰も知らない。
それは平凡な生活を送る普通のOLである香澄の密やかな趣味であり、楽しみでもあったのだ。




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